EGOISTE
カツ丼
「ねぇ、ホルマリンとマスクドホルムって同じもの?」
鬼頭がこちらに背を向けたまま聞いてきた。
俺は開いていた雑誌から目を逸らさずに答えた。
「あ?そうだけど…」
「危険物?」
「いや、劇物指定だ」
「ふぅん」
鬼頭は納得したのか、再びレポート用紙に向かっている。と思われる。
しばらく大人しくレポート用紙に向かっているものの、またペンを休め。
「ねぇテレビとかで良くやってンじゃん。クロロホルム嗅がせて気を失わせるの。あれってホントに効果あるの?」
「ねぇよ。あんな微量じゃ無理。まだ(ジエチル)エーテルの方が効果あるんじゃね?」
「ふぅん」
「無水酢酸って、簡単に手に入れられるの?」
「いや。あれは麻薬の原料だろ?それに危険物指定だ。そう簡単には手には入らない」
「ふぅん」
……………
ちょっと待て!!
「お前どんなレポート書いてるんだよ!!」
何気なく流していたけど、良く考えたら普通の高校生が考えるような内容じゃねぇだろ!!
俺は起き上がると、鬼頭の背後から手元のレポート用紙を覗き込んだ。
「ちょっ!!何見てんのよ!変態!!」
「へ、変態だぁ!?お前が犯罪者になるのを黙って見過ごすわけにはいかねぇんだよ。見せろ!!」
「いや!!」
俺は鬼頭の背後からレポート用紙を奪おうと、鬼頭はそれを押しのけようと
とにかく密着した体勢で、俺たちは掴みあいをしていた。
「何してンの?」
と水月の据わった声を聞くまで。