EGOISTE
「と言うわけで、応援しててね☆ふたりとも♪」
楠は顔に、ぱっと笑顔を浮かべた。
鬼頭が無言で頷く。
俺もちょっと笑った。
「頑張れよ」
俺は楠と同じだけ強い視線を返してやれない。
他人事だから?とかそう言うもんじゃない。
俺は―――いつだって戦うことを諦めてたから。
戦うことを忘れてしまったから。
「そうだ、楠。いいものやるよ」
俺は点滴のパックを引き寄せると、ベッドから身を乗り出した。
ベッドのすぐ脇にある引き出しつきの棚の一番上の段から先程、遊んでいた将棋の駒を取り出す。
その一つを楠の掌に握らせた。
楠はゆっくりと手を開き、目をまばたいた。
「将棋の・・・・・・駒?王将だ」
「げん担ぎ。お守りに持ってけ」
ホントは王将に縁起があるわけではない。
馬と言う字を反対にした、ひだりうまは縁起があるというが、それは将棋の駒に存在しない。
だから代わりと言っちゃなんだが・・・
「ありがと」
楠はぎゅっと掌で駒を握ると、ちょっと弱々しく笑った。