EGOISTE
エレベーターの鈍く光る銀色の扉に鬼頭を含む俺たち三人の姿が映っている。
鬼頭は、おもむろに両の目を開けた。
射るように冷たく―――刺すように憎悪を含ませた
あの独特の視線。
久しく見ていなかった視線だ。
「き…」と言いかけたとき、俺の声にかぶさるようにして鬼頭が口を開いた。
「何がだせぇんだよ」
空気をも震わせるような、澄んだ良く透る声。
声に独特の重みがあった。
ユニフォームを着た男たちが揃って顔を上げる。その顔に驚きの表情が浮かんでいた。
「言ってみな。何がだせんだよ」
鬼頭はポケットに手を突っ込んだまま、男たちを睨み上げている。
「……鬼頭…」
俺は鬼頭の肩に手を置こうとしたが、躊躇った。
髪の先からつま先まで殺気立っているようで、安易に触れたら怪我をしそうだった。
鬼頭は決して声を荒げているわけでもないのに、男たちはその気迫に押されたのか、顔を歪めて一歩後退した。
「何も知らないくせに。知った風な口聞かないでよね。それに先生だって気が引きたくてここに入院してるわけじゃねんだよ。ただの偶然。
先生はね、そんなことしなくてもその気になれば、すぐに千夏さんの心を奪い去ることできるんだから
それにだっせとか言うあんたらの方がださいっつーの。病人が入院して何が悪いんだよ。それでも医者かっつうの」