EGOISTE
鬼頭の言葉に男たちがたじろいで顔を合わせている。
俺は口元に思わず笑みを浮かべた。
「もーいーよ。もう充分。お前はやっぱいっつも攻めの姿勢崩さないな」
俺は鬼頭の頭をポンと叩いた。
「だって、悔しいじゃん」
「そうだ、そうだ!」と楠も隣で眉を吊り上げている。
「そうだな」頷いて、俺は男たちの方を見た。
不敵に笑う余裕すら出てきた。
いつもの俺だ。
「どんなに言ったって、負け犬の遠吠えにしかなりませんよ、研修医さん。ドクターになりたいんなら、心根から研修し直しな」
俺の最後の言葉は奴らの痛いところをついたらしい。
効果絶大だった。
「あ、あんたに何が分かるって言うんだ」
顔を青くして、一人が唸った。
あー、もう…めんどくせぇ。
俺が額に手をやると、どこからか澄んだ声が聞こえた。
聞き慣れた―――
声だった。
「この方は医師国家試験を一回でパスして、その後の臨床研修も終えた立派なお医者様です。国家試験や研修の辛さを痛い程お分かりになる方です」
俺が顔を上げると、エレベーターからちょっと離れた場所に、患者のカルテを手にしたナースが一人こちらをじっと見据えていた。
見間違いもなく彼女は
千夏だった。