EGOISTE
「え……こいつが…医者??」
男たちは驚きに目を見張って、一歩後ずさった。
そんなに驚くことか??
まぁ、医者には見えないって良く言われるケド。
千夏は表情を変えずにぺこりと一礼すると、踵を返して行ってしまった。
待って!
行かないでくれ!!
そう叫んで呼び止めたかったけれど、俺の足は地面に吸い付いたままだし、固く閉ざした口は開くことがなかった。
俺は固まったまま、千夏の後姿を見送ることしかできなかったんだ。
情けねぇの。
医師免許を持ってるから、何?
医者だから何??
俺は愛する女を呼び止めることも、ましてや彼女の心をかっさらうこともできない、ただの
臆病者だ。