EGOISTE
朝顔
入院も三日目になると、点滴のお陰かだいぶ胃の具合が良くなりつつあった。
この日は検査のあと、7分粥とヤクルトが出て俺は残さず食うことができた。
そして昼になると、林クリニックの高田さんが見舞いに来てくれた。
「お加減いかがですか?みんなお見舞いに来たがってましたよ」
と高田さんはにこにこ。
みんな、と言うのは他のナースたちのことだろう。
「俺がここで入院してるのは内緒にしておいてください」
俺は思わず苦笑い。
あそこで働くナースたちは別に嫌いじゃないけど、どうも俺はあのキャピキャピした雰囲気が苦手だ。
でも高田さんは別。
「みんな大先生に入院場所を聞いていたんですけど、大先生ってばうまくはぐらかしてまして」
ナイス親父!
病室が騒がしくなることを考えていたんだな。
「高田さんはどうして知ったんですか?」
「私が大先生に尋ねると、先生は何故か私にだけ教えてくださいました」
にっこりと穏やかに笑って、高田さんはバッグの中をごそごそとまさぐった。
取り出したのは10㎝ほどの白いしおりだ。
あの、本に挟んだりするやつ。
「これ、お見舞いです。本当はホンモノを持ってきたかったのですが、鉢植えは縁起上良くないかと思いまして」
そう言ってしおりを俺に手渡してきた。
以前高田さんが世話をしていた、青紫色の朝顔がきれいに押し花にされていた。