EGOISTE


―――――へ?


いや……あの……


楠サン……?


君は何をしてる……のかな??




イチゴのような甘い香りの吐息をちょっと吐いて、楠の顔が遠ざかっていく。


「へへっ…♪」


照れくさそうに笑い声を漏らす楠の声が遠くで聞こえた。


「ちょっとあたし…先生に惚れそうだった。って言うか明良が居なければ、告ってたかも」


…ち、ちょっと待て……


どこを、どうとってその気になったんだ?


「先生ってさぁ…やっぱ優しいよね。あたしのことたくさん考えて応援してくれたし」


俺は目を開けていないから、分からないけど。


楠は今幸せそうに微笑んでいるに違いない。


声に…そんな温かみを感じるから。





「先生、いっぱいいっぱいありがとう。



でも明良のことが好き。誰にも渡したくないの。



だからがんばるね。



これからも応援して。また辛いことがあったら話聞いてね




先生もがんばって」






大好きだよ






そう言って、楠の香りがふわりと遠のく。


きっと立ち上がったんだ。






俺も



俺も好きだよ。お前の生き方―――





お前のまっすぐさ







だからがんばれ、楠。






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