EGOISTE
ほんのり甘いバニラの中に、白檀と薔薇の香り……
EGOIST
なん……で…?
この病院に入院してること、水月には口止めしておいた筈……
何でお前が居る―――
そんな必死の問いかけもむなしく、またも空間がねじれて眠りの奥へ引き込まれる。
「………まこ…」
歌南の冷たい指先が俺の頬をそっとなぞった。
細くて長い指先。
赤いマニキュアが映える、白くてきめこまやかな肌……
かつては何度もその手に自分の指を絡めて、何度も口付けした。
その手が今は俺の頬を撫でている。
待って…俺を眠りに連れて行かないでくれ。
俺は必死になって願った。
何で?
歌南のことなんて今更どうでもいいじゃないか。
こいつとは縁を切った(つもり)。
なのに、俺は今こうして歌南の感触を感じていたいと思う。
それが夢でも。
歌南は俺の手を彼女の両手で握ると、そっと持ち上げ、彼女の顔に近づけた。
俺の手を包み込んだ彼女の手は、
僅かに震えていた。
・ ・ ・ ・ ・
「まこ―――あなたまで居なくなっちゃうかと―――思った……
あたしを
置いていかないで………」