EGOISTE
俺は黄色い薔薇を手に取った。
花びらはつやつやとしていたし、色も鮮やか。持ってきてまだ間がない。
「薔薇?さっきはそんなもの無かったよね」
鬼頭が首を捻る。
「僕たちが売店行ってるときに、誰か来たのかな?あ、楠とか」
「乃亜の差し入れは串かつだよ。花なんて持ってきてない」
串かつ…またあいつはそんなもん持ってきて。
嫌がらせとしか思えん。
カツ…
「がんばってね」
楠の最後の言葉が甦った。
なるほど、げん担ぎかぁ。
「タバコ…誰だよ、こんなところに置いたの」水月が薔薇の隣に置いてあるマルボロの箱に手を伸ばした。咎めるように、ちょっと眉を険しくさせている。
「まこは今吸えないんだから、こんなの置いておいたら目の毒だよ」俺は水月の腕を乱暴に掴んだ。
「まこ……?」
水月がびっくりして、目を開く。
「あいつ……歌南、今どこにいる―――?」