EGOISTE
よっぽど鬼気迫るものがあったに違いない。
水月はびっくりして目を丸めながら、俺を見下ろしている。
「姉さん?さぁ、家に居ると思うケド…」
「確認しろ」
「…何で?」
怪訝そうに水月が眉を寄せた。
俺はまっすぐに水月の琥珀色の目を見据えた。見ようによっちゃ睨んでいるようにも見えるかも。
「水月、電話してみよう。歌南さんに」
鬼頭が水月の腕に手を掛け、ちょっと強い力で引っ張った。
「う…うん」とどこか納得できないような水月。
「俺も行く」
そんなこんなで俺らは三人揃って、ナースステーションの前にある緑の公衆電話の前に移動した。
歌南のナンバーをプッシュして、受話器を耳に当てているのは水月。
俺と鬼頭はすぐ近くでそれを見守っていた。
水月はしばらく耳に受話器を当てているものの、俺を見て首を振った。
「だめだ。出ない…」
俺の心臓がざわざわと嫌な予感で満たされる。
言いようのない不吉な予感に、俺は胃の辺りを押さえた。
薬で抑えてあるにも関わらず、覚えのある痛みがチクチクと刺激する。
「非通知とか公衆電話の番号を拒否してあるのかも。水月、外で水月のケータイから掛けてみて」
鬼頭は淡々といい、エレベーターを指差した。
「う、うん…」
俺の心配が顔に出ていたのか、水月は言われた通りエレベーターに駆け寄っていった。