EGOISTE
好き≦愛してる?
亡くなって……
え……?だって、あいつそんなこと一言も…
「殉職だって。姉さんの旦那さん、警官だったんだ。強盗事件に巻き込まれたって」
遠くで水月の声がエコーがかって聞こえる。
殉職?
まるで異国の言葉を聞いているようだ。
「つまんないこと気にするのね」
「別れる―――って言ったら?」
……思い返せば、あいつの言葉には旦那との不仲を示唆する言葉が見え隠れしていた。
いつでも…
単なる不仲だったらよっぽど良い。どうとでもなる。でも相手が死んでりゃ、取り付く島もない。
「そういう―――こと……」
俺は乱暴に前髪を掻きあげた。
分かりにくいんだよ。お前は……
言わなくても分かれってか?そんなん無理だよ。
俺たちはもう、何も喋らずとも分かり合う仲じゃない。
それとも最初からそんなこと、できなかったんじゃないか。
だから別れた―――……?
俺は覆った手を退けると、水月を見下ろした。
困惑と不安に歪んだ表情が目に映って、俺は無理やりに笑った。
「そんな顔するなって。大丈夫だよ。そのうちひょっこり連絡くるって」
俺は水月が大抵何を考えて、どんな行動をするのか分かる。
歌南は―――俺と水月ほどの距離感がなかった。
ようやく分かったよ。
お前が別れを切り出した理由。
皮肉だな。
こうなって初めて………
俺はお前の本当の気持ちに少し触れられた気がする。