EGOISTE
産婦人科…!
「ねぇ先生、それってどういう…」
不安そうに鬼頭が俺を見上げてきた。
「どうって…あいつ―――妊娠……してたのか?」
旦那との子供を―――宿してたってわけか…
「一週間って言ってたよな。堕胎(ダタイ)をするのに、丁度いい期間だ」
俺の口から出たのは自分でもびっくりするほど、冷静なものだった。
鬼頭が眉を寄せる。ハの字に下がった眉が、悲しみの表情を造り出していた。
「だから戻ってきたんだ。
日本で子供を堕ろすために」
「…そうとは限らないじゃん…」
鬼頭はちょっと俺を睨んだが、言葉は弱々しかった。俺の予想が70%の確率で当たっていることを、こいつも認めているに違いない。
たとえ残りの30%が、俺に会いたいからという理由であってもそれはそれで妙に納得がいく。
あいつは―――独りで怖かったんだ………
「―――ああ!もぅっ!!」
俺は乱暴に前髪を掻きあげ、布団を跳ね飛ばした。
勢い良く立ち上がると、引き出しの中に入っている、ここに運び込まれたときに着てきた服を取り出した。
「…どうするつもり?」
「どうするって、止めるに決まってンだろ!!」
荒々しく言ったにも関わらず、鬼頭は俺の言葉を待っていたように、表情を緩めた。