EGOISTE
恋人岬
車は緩やかに国道を走っている。
運転してるのは千夏。助手席に俺。後部座席に鬼頭―――そして、やはり事情を話してついてきてもらうのがいいと判断した水月。
こいつのマンションに向かう最中、俺はケータイで事情を話した。水月はもちろんついてくるという返事で、迎えに行った際、慌てて乗り込んできたってわけだ。
片側三斜線の広い道路。車の量は少なく、一定距離を保った街灯のオレンジ色の光だけが点々と道の先を案内するかのように照らし出している。
「歌南さん。海が見えるところにいるって言ってた」
「海たって、どこの海だよ。目的の海が見つかったって、もう夜は遅いしどこか泊まってるだろ?」
まずった…
考えなしで飛び出してきたはいいけど、状況を考え無さ過ぎだ。
「歌南さんは、先生に言わないでとは言わなかった。きっと先生に見つけてほしいんだよ。何かないの?思い出の場所とか…」
鬼頭が助手席のシートに乗り出す。
「思い出の場所たって……」
俺はちらりと運転席を見やった。
千夏はちょっと苦笑いを漏らすと、
「わたしのことは気にしないで。考えてあげて。その人のことを」
と言ってハンドルを持ち直した。
「そう言われても……」
「何かないの?デートした場所だとか」
後部座席の水月も思わず身を乗り出す。
「デートっても…そんな遠出は……」
俺は歌南との記憶を必死に手繰り寄せた。映画館だとかバーとかクラブとか、室内系は二人の行きつけだったし、二人ともアウトドア派じゃなかったから、屋外デートってのがあまりない。
くそっ!
思い出せねぇ。