EGOISTE
海は昼と夜とでは全く別の顔をしていた。
まるで女の機嫌のように、顔色を変えるその様に気付きにくいのも当然だ。
燈台が立つのは小高い山のようになっている。ただし、灯台の向こう側は恋人岬と呼ばれる所以にはあまりにも似つかわしくない絶壁になる。
灯台の前の広い駐車場に車を止めると、俺たちは次にどうするべきか話し合った。
「この辺のホテルとか民宿しらみつぶしに当たってみるか」
「でもふらっとこの辺を歩いてるかもしれない」
「二手に別れたほうが手っ取り早いんじゃないかしら」
と鬼頭を省く大人三人で話し合っていると、
「その必要はないんじゃない?」と鬼頭が俺の袖を引っ張った。
「あ?」
「ほら、あそこ。人影が見える。歌南さんじゃない?」
そんな都合良く―――…と思って俺が顔を上げると、燈台からちょっとだけ女の後姿が覗いていた。
確かめるまでもなく―――それが歌南本人だと分かった。
俺は無言で車を出た。
その後を水月、鬼頭―――そして千夏の順についてくる気配があったが、振り向かずに真っ直ぐに俺は灯台に向かった。
やがて三人の足音が止み、少しだけ振り返ると
水月も鬼頭も―――千夏も……
緊張したような、それでいてどこか悲しそうな複雑な笑みを浮かべて俺の背中を見送っていた。
ここから先は
俺じゃないとだめなんだ。