EGOISTE
「そうやって簡単に捨てるのかよ。思い出も、子供も」
俺は今どんな顔をしているのだろう?怒っている、嘲っている?
どちらでもない気がしたけど、それらに酷く似ている気がした。
歌南がちょっと息を呑む気配があった。
掌にのせたリングをまた包み込むと、その手でゆっくりと髪を掻きあげた。
「なぁんだ。あんたやっぱ知ってたの?雅ちゃんから聞いた?直接的なことは言わなかったのになぁ」
何かを諦めたように、あっけらかんと言うその姿に元来の歌南を見た。
「あいつだってすぐに気付いたよ。心配して俺のところに駆けつけてきたってわけだ。
だがお前の言いつけ通り、あいつは水月には言ってないぜ?まぁ結局俺が水月に報せたけど」
「頭が良い子なのね。あんたそっくり。でも素直なところはあんたに似てないわね」
「あいつは素直なんかじゃねぇよ。お前より100倍難しい」
憎まれ口を叩くと、歌南はちょっと笑った。
「やっぱりあんた変わったわねぇ」
ちょっと口元に微笑みを湛えると、歌南は疲れたように額に手をやった。
「今のあんたに―――
もっと早く出逢えてればなぁ」