EGOISTE
俺は大股に歌南に近づいた。
歌南は逃げようとはしなかった。だがしかし、細かく震えている。
俺は乱暴に歌南の両肩を掴むと、こいつを真正面から見据えた。
「じゃぁ聞くが。お前は俺の何が分かってるって言うんだっ!!ええっ?」
俺の怒鳴り声に、歌南をはじめとする背後の三人まで息を呑む気配がした。
「俺だって強くねぇよ!ホントはお前のこと忘れられねぇよ!!でも平然としてるお前見ていてムカついてしょうがなかった!!
ああ!好きだよ!!お前の言った通り、まだお前が好きだ!!だけど、俺の苦しみ、お前には分かるのか!!?」
俺の怒鳴り声は空虚な空に響いて、うっすらと反響した。
思えば女にこんな風に怒鳴ったのははじめてのことだった。
「答えろよ!俺がどんな気持ちでここに来たか!どんな気持ちであの三人を巻き込んだか!!お前はちょっとは考えたことがあるのかよ!」
歌南の腕を掴んで揺する。
力を入れた指の先が、歌南の柔らかい肌に食い込んでいた。
「まこ…痛っ!」
歌南が顔をしかめたが、俺は力を緩めることもしなかったし、手も離さなかった。