EGOISTE
Marlboro
タバコの箱の中身が空だったことに気付いたのは、千夏の勤める国立病院へ向かう最中だった。
俺は車をコンビニに向かわせた。
「いらっしゃいませ~」
大学生だろうな、まだ若い女の店員が愛想よくにこにこ挨拶してくる。
「マルボロライト…」
と言いかけて、止めた。
「やっぱクールミックス。8mm一つ」
は~い、と間延びした返事が返ってきて、すぐ後ろのタバコの陳列棚に手を泳がせる。
マルボロは……16から吸い始めてからこの方変えてない。
歌南の愛煙していたのとたまたま一緒だったってだけだ。
でも今はそれすらも嫌になってる。
俺たちは共通点が多すぎたんだ。
食の好みから、趣味、性格までも。
クールは水月が吸っていた銘柄だった。
時々貰うことがあったが、まずくないのでそれにした。
タバコも値上がりしたしなぁ。
これを機に止めるのがいいかもしれない。
なんて考えてると、カウンターの上にタバコがすっと置かれた。
「こちらで宜しいでしょうか?」
店員は満面の笑みでにこにこ答える。
やっぱ止められそうにないな。