EGOISTE
千夏がシャワーを浴びている30分…いや、40分ぐらいかな?どっちでもいいや。
とにかくその時間俺は、やたらとタバコを吹かし、冷蔵庫の中のビールを飲んだ。
まだ治療中だと言うのに、そうでもしなきゃ精神的に狂ってしまいそうだったから。
「おさきに」
バスルームから出てきた千夏は、アイボリー色の清潔そうなバスローブを纏い、まだ濡れたままの髪にタオルを被せていた。
しばらくぶりに見るそんな姿に、俺の心臓がドキリと大きく跳ねる。
「誠人も入ってきたら?汗かいたでしょ?」
そう言ってテーブルに置かれた灰皿と、ビールの空き缶に目をやる。
「誠人。だめじゃない、まだ治療中だって言うのに」
ちょっと咎めるように俺を睨むと、彼女はビールの空き缶を片しだした。
普段通りの千夏に、ちょっと安堵の息を漏らす。
俺はその小さな背中に向かって問いかけた。
「……千夏」
俺たちが仲良かった頃のように、変わらず気軽な感じで。
でもその声は決して前と同じではなく、たった三文字の中に緊張と不安が滲んでいた。
「早く入ってきなよ」
振り向きもせずに、まるで遮断するかの物言いに俺は、何を話そうとしていたのか頭の中から一瞬で消えうせた。
大人しくバスルームに入る。
彼女が何を考え、どうするつもりなのか。
そんなことを考えては、振り払うように頭を振って。
そんなことをしながら頭から熱い湯を浴びた。