EGOISTE
別れたばかりだというのに、こんなことを聞く俺ってすっげぇかっこわりぃ。
だけど聞かずには居られなかった。
俺はまだ千夏のことが好きで、好きで………
愛してるから。
千夏はちょっと吐息をつくと、険しかった視線を緩めた。
「この間、居酒屋で一緒だった男の人、覚えてる?」
「……ああ、研修医の…」
エレベーターホールで難癖つけてきたから、忘れようにも忘れられない。
「あの人から付き合ってくれ、って言われてるの」
やっぱりな。
別に意外でもなんでもない。あいつの千夏を見る目は同僚を見る目じゃなかった。
明らかに好意のある視線だった。
「で、付き合うの?」
千夏は口を噤んだ。
まっすぐに俺を見ているが、その視線は俺じゃない遠くに向けられているようだった。
重苦しい沈黙が流れ、やがて千夏は口を開いた。
「うん」