EGOISTE
千夏は俺の腕の中で身を強張らせた。
やっと伝えることができた言葉はみっともないほど震えていた。
「こんな……
追い縋ることしてみっともないけど、こんな情けない俺さらけ出したくなかったけど、俺はお前じゃないとダメなんだ。
お前を忘れることなんてできない」
千夏は俺の胸にちょっと手を押し当てた。
千夏が離れていこうとしているのが分かったから、俺はさらに力を込めて彼女を抱き寄せた。
離れていかないように。
「お前が俺よりその研修医が好きだったら、俺は諦める。だけどそうじゃなかったら……」
俺の言葉を遮りながらが、千夏は口を開いた。
「彼のこと好き―――」
小さな答えだったけれど、その言葉は俺の中に大きな波紋を呼んだ。
目の前が真っ暗になる。
いや、照明を落とした部屋自体は薄暗かったけれど、ホントにフェイドアウトしたみたいに、胃潰瘍で倒れたときみたいに
俺の心の中に深い闇が堕ちた。