EGOISTE
千夏の陶器のような白い額にそっと口付けをすると、俺は彼女を起こさないようにそっと腕を抜いた。
分厚い遮光カーテンを少しだけ開けると、空はうっすらと明るかった。
空に淡い紫色のカーテンが広がり、まるで絹のような白い光りが所々さしている。
美しい光景だった。
夜明けだ―――
俺は昇り行く朝日に目を細めながら、幸せな夜明けに頬を緩ませた。
カーテンの向こう側は、ちょっと歩くと海岸になっている。
昨日は夜だったし、正直景色を眺めるほどの余裕なんてなかったから、外がどうなってるか知る由もなかったけど。
白い砂浜に、小さく女の影があった。
白い短めのワンピース。白い日傘を差してゆっくりとその影が歩いている。
日傘の中から黒くて長い髪の端が覗いていた。
歌南―――………?
一瞬そう思ったが、違った。
人影がくるりと振り返り、日傘を傾けたその女は―――
鬼頭だった。