EGOISTE
またな
「お前のお陰。全部お前が助けてくれた。俺を後押ししてくれた。ありがとよ」
「うん。あたしこそありがとう。
先生にいっぱい助けられた」
それだけ言うと、鬼頭はすっと左手を差し出してきた。
白い砂浜に鬼頭の手の影が伸びている。
「戦争は終わったね。だからこれであたしたちもさよなら。戦友はそれぞれ故郷に帰って、幸せになるの」
鬼頭の差し出した手の先がゆらゆらと揺らいでいる。
俺は鬼頭の白い指先を見て、そして鬼頭の顔を見た。
変わらず笑顔を浮かべている。
俺はジーンズから手を出し、鬼頭の手に近づけた。
影も同じ動きをする。
「冗談じゃねぇ。俺はお前と戦ったつもりはねぇよ」
俺の言葉に鬼頭の指先が一瞬ぴくりと動いた。
俺は鬼頭の黒曜石のような瞳をまっすぐに捉え、その奥まで気持ちが届くよう口を開いた。
「俺たちは友達だ。
それぞれの故郷も、居る場所も
同じ場所だ」