EGOISTE


鬼頭が驚いたように目を開く。


砂浜に落ちた影が動いて、俺の手のひらは小さな鬼頭の手に重なった。


「これからも宜しくな。友よ」





「なぁにそれ。くっさい台詞」


鬼頭は笑ったが、細めた目尻に光る何かを見た。


鬼頭の小さな手が俺の手を握り返してくる。


「こちらこそ、宜しく」


恥ずかしそうに俯いて、鬼頭の小さな声が波の音に乗って俺の鼓膜に届いた。





完全に顔を出した朝日が眩しい。


それは俺達の新しい船出を歓迎しているようで、それでいて今までの苦しいことを浄化しているように見えた。






きれいな


朝日だった。





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