EGOISTE


「あがり」


その一言で、雀卓に並べられた麻雀牌を、俺と水月、それから楠の三人で覗き込む。


13種類の幺九牌。


う……そだろ―――!!


「国士無双でしょ?あたしの勝ち~♪」


ご機嫌に言う鬼頭を横目に、俺はくわえていたタバコをぽろりと落としそうになった。


前を向くと水月も同じように、タバコを口から落としそうになっている。


慌てて戻すと、


「ありえねぇ」と忌々しそうに表情を歪めた。


「誰だよ!鬼頭に麻雀教えたのは!!」


「教えたのは僕だけど、まこが麻雀やりたいから雅と楠に教えろって言ったじゃん」


水月が不服そうに口を尖らせる。


「そうだけど…」


「ビギナーズラックって言うのかな?でも勝ちは勝ちだよね。約束、今度ケーキ奢ってよね」


鬼頭はふふんと言った感じのドヤ顔で、俺と水月を交互に見る。


「ったく~、適わねぇな、お前には」


「国士無双…雅が満貫…」


向かいの席で水月が、ショックを受けたようにブツブツ言っている。


「まぁマグレだって。次やろうぜ~。洗牌(シーパイ:牌をかき混ぜる作業)だ」


ジャラジャラと音を鳴らして牌を混ぜる俺の横で、鬼頭が訝しそうに眉を寄せている。


「何か先生、今日やけに機嫌いいね。何かあった?」






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