EGOISTE
じゃらじゃらと音を鳴らして、洗牌していると鬼頭の細い指先に触れた。
俺も鬼頭も敢えて手を引っ込めることはしなかったし、「ごめん」と詫びることもしなかった。
友達同士にそんな気遣いは不要だったから。
「麻雀牌を混ぜる音はね。縁起がいいんだって」
牌を混ぜながら、鬼頭はちょっと睫を伏せて微笑んだ。
「縁起?」
「ああ。中国のどこかではお葬式のときに麻雀をするらしいね。洗牌が死者の餞(ハナムケ)になるって」と水月がのんびり言った。
「へぇ」
俺はそんなことちっとも知らなかった。
単なるギャンブルに一々意味なんて考えてなかったから。
「歌南さんの旦那さんにさ、この音が届くといいね」
鬼頭は穏やかに笑った。
海を挟んだ遠くの国から届いた写真付きのエアメイル。
二度目のエアメイルに、歌南が大きくなったおなかを撫でながら、笑顔でこちらを見ていた。
鬼頭のその表情は、歌南のそれと良く似ている。
恋人岬で見せた、あの悲しみに満ちた表情は欠片もなかった。
愛する者を失った悲しみは、一生消えないだろうけど
新しい命とともにそれを守り抜く決意がみなぎっていた。
歌南―――
お前は昔も今も変わらず、やっぱりイイ女だよ。