EGOISTE
「結婚式何着ていこうね~♪」
と楠はにこにこ顔で鬼頭を見ている。
「思い切りおめかししてかなきゃ」と鬼頭。
俺はめかしこんだ鬼頭を想像して、ちょっと顔を歪めたけれど、それでもやっぱり俺の想像の中で鬼頭は美少女で、
憎らしいほど可愛いんだ。
「あたし友人代表でスピーチしようかな♪」なんて言い出す始末。
勘弁してくれ。
こいつにスピーチを頼むと俺の様々な悪行を吐露されそうだ。
牌を積上げながら、水月がタバコを灰皿に押し付けている。
「お母さんは来れるって?」
「いや、まだ言ってねぇ」
その後の話で、母親は再婚相手の旦那とうまくやっているらしい。
俺が結婚するかもしれないことを伝えると、自分のことのように喜んでくれた。
って言うか、実はまだ千夏の両親にも報告してないんだよな。
当の本人は、俺が「結婚しよう!」と言ってリングを手渡すとびっくりしたような拍子抜けしたように目を丸めていた。
「何だよ、俺が逃げるとでも思ってたのかよ」
そう言ってちょっと睨むと、
「だって誠人は結婚する気なさそうだったし」なんて酷いお言葉。
「そうゆうのめんどくさい、って思われそうだったから」
あのとき千夏は、俺の顔色を伺うように目だけを上げて俺を見つめてきた。