EGOISTE

未来への道



―――

その後は結構忙しかった。


もちろんすぐに千夏のご両親には殴られる覚悟で報告したけど。


別段怒られることはなく、トントン拍子に話はまとまった。


盛大な覚悟をしていったわけだから、正直拍子抜けだったけれど、


良かったっちゃ、良かった。




それから慌てて結婚式場の予約を入れ、招待状を送り、その間に千夏は検診。職場を辞める事にして引継ぎやら何やらで忙しかった。


ドレスを選びに行く日に、俺は例のごとく彼女を病院まで迎えに行った。


そこで、足立のじーちゃんに会った。


長らく入院していたじいちゃんも今日が退院だと言うことで、孫のみやこ嬢が付き添っている。


結婚することを何気なく言うと、じいちゃんはがっかりしたように肩を落とし、みやこ嬢は反対にくすくす笑っていた。


「実はね、先生。あたしも来年結婚するんです」


みやこ嬢はこっそり俺に耳打ちしてくれた。


「へぇ。それはおめでたいですね」


「おじいちゃんにはまだ言ってないんです。びっくりさせようと思って」


「びっくり…ねぇ。あのじいちゃんのお目がねに適うのか…」


「あら。ご心配なく。先生よりずっと男前ですから」


可愛い顔してサラリと酷いことを言う。


それでもやっぱり関わった人が幸せになるのは嬉しかった。


俺はほがらかな気持ちで二人を見送った。


裏口で千夏を待っていると、今度は俺にイチャモンつけてきた、あの千夏に気がある研修医が出てきた。


「植村さんを待ってるんですか?さっき帰りましたよ」


と棘のある物言いに、俺はふんと鼻を鳴らした。


「信じられるかよ」







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