EGOISTE
鬼頭も起き上がった。
淡いブルーのキャミに、程よく色落ちした細身のジーンズ。
ちゃんと服を着ている。
なるほどこいつが言うように、俺たちは何もなかったようだ。
「ねえ、水月のお姉さんってどんな人?水月、お姉さんが帰国するの嫌がってたみたいだけど」
「あ?」
「会ったことある?」
「まぁ、何回かは……。あいつと…水月とは正反対だよ。短気で人使いが荒くて、わがままで野心家で」
俺は枕元に置いたメガネを手繰り寄せて、かけた。
そこに置いた記憶はない。
きっと水月が外して置いてってくれたんだろうなぁ。
「ふぅん」
鬼頭は納得がいったのか、いってないのかよく分からないけど曖昧に返事をするとのんびりと立ち上がった。
「頭いてぇ」
リビングのソファに座って、鬼頭に水をもらう。
「バカみたいに呑むからだよ。早く千夏(チナツ)さんに謝って仲直りしなよ」
あ?俺千夏と喧嘩したことこいつに話したっけ?
わかんねぇ。
俺は立ち上がった。
「なに、帰んの?」
「おう。水月が帰ってくるまでに退散するわ」
鬼頭がめずらしく熱っぽく俺を見上げている。
何だ?こうして見るとやっぱりこいつ結構…いや、かなり可愛い顔してんな。
「どうした?寂しいのか?」
ガチャ!
ふいに扉が開く音がした。