EGOISTE
―――
女の予想通り、彼女がいなくなったことを誰も気にしていないようだった。
なんだかなぁ。
あのメンバーの中で彼女が一番面白くてきれいだったのに、野郎共はどこに目をつけてるんだか。
ま、こっちとしてはライバルが減って助かったけど。
居酒屋を出るとお決まりの二次会コースに流れることになったが、俺はうまく言いくるめてメンバーから外れた。
急ぎ足でバー“ZERO”に向かう。
半分……いや、半分以上彼女がその場にいないことは予想していた。
だから、窓際のカウンターの席でマルガリータを飲みながら、文庫本を読んでる彼女の後姿を見たときは、何とも言えないほっとした安堵感がこみ上げてきた。
それと同時に俺は彼女の背に今まで見たことのない、美しい何かを感じ取った。
俺が彼女の肩をぽんと叩くと、
「ホントに来た」
と言って彼女は柔らかく微笑んだ。
「何だよ。誘ったのは俺だぜ?」
俺は唇を尖らせながらも、彼女の隣に腰掛けた。
俺がジンリッキーを頼み終えるのをきっちり見届けると、彼女は笑いながら口を開いた。
「からかわれたのかと思った」
「んな暇ねぇよ」
「そうよね」
クスっと微笑んで、
「せっかく来てくれたから教えてあげる。あたしの名前。
千夏。植村 千夏っていうの」
それが千夏とのなれそめだ。