EGOISTE
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「酒、酒~っと」
俺がシンクの下の棚を漁ってると、日本酒やら焼酎の瓶がいっぱい出てきた。
千夏と飲もうと思って珍しいのを買い揃えていたんだ。
彼女は意外にもうわばみだ。俺よりも強い。
洋酒より日本の酒が好きだと言ったことを思い出す。
これらはもうしばらくシンクの下で眠ってもらいそうになる。
「アル中」
キッチンで水を飲んでいた鬼頭がぼそりと言った。
「うるっせーな。飲まなきゃやってられねぇんだよ。お前だってあと5年もすりゃ酒のうまさに気づくはずだ」
てか、こいつホントに今日も来やがった。
「先生って早死にしそうだよね」
ミネラルウォーターのペットボトルを冷蔵庫にしまいながら鬼頭が言った。
「お酒にタバコ。体に悪いものばっかり。医者のくせに」
「水月だってそうだろ?」
「……まぁね」
鬼頭はつまらなさそうに呟いた。
「大体人生なんて短いもんだし、やれること、楽しいことやっておかなきゃ損だろ?」
「刹那的だね」
鬼頭は形の良い目を細めた。
「何とでも言え」
俺は深緑色の日本酒ボトルを取り出した。
ラベルには“国士無双(コクシムソウ)”と書いてある。
国史の中で並ぶ者はいない。天下第一の人物をさす言葉で、麻雀の役満貫の一つでもある。
俺はこの言葉が好きだった。
そう言えば、神代姉弟はやたらと麻雀が強かった。
ボロ負けして、いくらかすったっけ。
最近は人数も揃わなくなったし、いつの間にか遠のいていたから忘れかけていたけど。
こんなこと思い出すのはやっぱり歌南の存在のせいかな。