EGOISTE
「…今だけだ」
「そ」
鬼頭はそっけなく言うと、俺と同じように体を仰向けにさせた。
今度は俺が鬼頭の方に体を向ける。
鬼頭は俺の方を見なかった。
ただ白い天井をじっと見つめている。
「なぁ、お前らでも喧嘩とかする?」
「喧嘩?するよ。って言ってもいつもあたしが勝つけどね」
だろうな。
こいつは色んな意味で強そうだ。
しかし、水月が怒るなんて想像できない。
俺と違ってあいつは優しいから。
まぁ歌南に対しては例外だけど。
「千夏さんとは仲直りできた?」
ふいに鬼頭が口を開いた。
「まだ」
仲直りしようにも、あいつが何で怒ってるのかすら今の俺にはわかんねぇ。
「どうしたら機嫌直ると思う?」
鬼頭の横顔がこちらを向いた。
「そんなことあたしに分かるわけないよ」
「それもそうだな」
って言って、俺は気付いた。
いつもきれいな鬼頭の唇が若干荒れている。
こんな間近で見る機会なんてあんまりないから、特にはっきりと分かった。