EGOISTE
「鬼頭、唇、荒れてる」
そう言って何の気なしに俺は鬼頭の唇に指をやる。
そっと触れた唇は俺の診立てどおりかすかにかさついていた。
鬼頭は目を開いて俺を見ると、すぐに振り切るように、ふいと顔を逸らした。
「乾燥してるからかな」
「ビタミン不足だろ?レモンでも食っとけ」
俺は手を引っ込めると、鬼頭にいらない緊張を持たせないため再びこいつに背を向けた。
まったく……今頃意識しだすなよ。
これだから女ってめんどくせぇ。
当分眠れそうにないな。
そんなことを思いながら、俺はいつしか眠りに入っていた。
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迫り来る暑さと、僅かな重みでぼんやりと目が覚めた。
目を閉じたまま、
「暑い……重い…、鬼頭上に乗るな…」
「鬼頭って雅ちゃんのことでしょ?あんたたちってそうゆう関係?」
忘れもしない色っぽい声がして、俺はぱっと目を開けた。