EGOISTE
一刻でも早く歌南を追い返そうと、俺は食事を急いだ。
出かけるときに、こいつを返そうという寸法だ。
ところが、歌南は食事もそこそこに手を止めると、俺の隣に回り込んできた。
「何?」俺が目を細めてちょっと迷惑そうに睨む。
「何って、まだ時間あるでしょう?これから一戦交えないかと思って♪」
俺の肩に腕を乗せて艶っぽく俺を見据えてくる。
てか一戦って……
「はぁ!?んな起き抜けにやるか!!」
「あら。夜だったらいいの~?」
「誰がお前なんかとするかボケ。知ってんだろ?俺が浮気しない主義を」
「主義は曲げるためにあるのよ。いいじゃない、黙ってりゃばれないわ」
この女。昔からちっとも変わってねぇ。
「そういう問題じゃない。俺はお前なんかに欲情しないの」
きっぱりはっきり言ってやった。
ホントのことだ。
それでも歌南はへこたれずに、俺の首に巻きついてくる。
歌南のエゴイストが妙に鼻につく。
俺は食事をする手を休めなかった。
「てか、お前旦那いるだろ?」
歌南が俺にじゃれてくる手をふいに止めた。
「つまんないこと気にするのね」
歌南は俺から離れると、その薄い瞳を細めて俺をまっすぐに見据えてきた。