EGOISTE

俺は恐る恐る、という感じでその花びらにそっとふれた。


思ったよりしっとりとした感触がした。


大丈夫か?こいつ元気ないんじゃないか?


まぁ暑いしね。


院内をきょろきょろ見渡したが、ナースは全員帰ってしまったようだ。


しん、と静まり返っている。


「しょうがない……」


俺は花瓶を手にした。



思ったより、重い。まぁガラスだから…


診察室の奥に給湯室がある。


俺は花瓶をそこまで運んで花瓶の中の水を捨てると、蛇口を捻って水を入れた。




「花の命は短いんだからなぁ。お前らがんばって生きろよ」


なんて一人で話しかけてるところがイタイ。





くすっ。




背後で小さな笑い声が聞こえた。




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