EGOISTE
「黄色い薔薇には、“不貞、嫉妬、薄らぐ愛”なんて花言葉があるんですよ。
あと、“笑って別れましょう”って意味も」
「笑ッテ別レマショウ」
歌南に直接言われたわけじゃない。
でも、黄色い薔薇を置いていったって意味は、つまりそういうことだ。
俺は振り返った。
ナースが一人、立っていた。
名前を確か……高田とか言う。大人しそうな女だ。
ナース服から、私服に変わっていた。帰るところだったのだろう。
「高田さん…帰ったんじゃ……」
「知りませんでした。若先生って、意外にお優しいんですね」
意外に、とは何だ。意外とは。
だけど、一人で花に話しかけてるイタイ所を見られてしまったから、何も言えない。
「忘れ物しちゃって。すみません、話しかけるつもりはなかったんですが」
「いえ……こっちこそ、何かみっともないところをお見せして…」
俺は曖昧に笑った。