EGOISTE
「とりあえず食べましょうか」
そう言って高田さんは箸を取った。どうぞ、と言ってさりげなく俺に手渡してくれる。
気の利かせ片まで、さりげない。
こうゆうのをホントの優しさって言うんだろうな。
日替わりランチは和食中心で、トンカツのみぞれ和えに色のきれいな煮物、サラダに味噌汁、ご飯といったメニューだ。
俺の目の前で食事をする高田さんは、食べ方が上品でどこか千夏を思い出させる。
歌南の食べ方は、きれいというよりなんか色っぽかったな。
女が食事をする姿にドキリとさせられたのは、初めての経験だった。
そんなことを考えながら食事をしていたので、飯はちっとも味を感じることができなかった。
せっかくの旨いと評判のランチなのに。
しばらく二人で黙々と食事をしていた。
女と食事に来ると大抵女は食事をしながら俺に話しかけてくることが多い。
食べながら食事をできる器用さは女の特権なのかな、その点男は不器用なのか、どちらか一つにしか集中することができない。
会話に夢中になってると食事が一向に進まないし、かといって食事に集中していると「聞いてるの?」と怒られる。
女ってのは不思議な生き物だ。
高田さんはどっちかって言うと男よりなのかな?
食事をしてる最中は俺に話しかけるのを極力控えている。
なんてぇ言うの?
男と飯食ってるみたいだ。