EGOISTE

食事も終盤に来ると、高田さんはお冷のグラスに口をつけながら俺を見た。


「さっきの話ですけど」


「さっき?あぁ女の人が元彼に会いに来るってどういうときかって話?」


「ええ、それ。わたしは元彼と別れたら一切連絡を絶っちゃうから、会いにいったりとかなかったけど、でもそうねぇ、その人が会いたいと思ったからじゃないかな」


俺は最後の一口を口に入れ、口の中でよく噛むとごくりと喉を鳴らして飲み込んだ。


高田さんの言葉を一言一言ゆっくりと咀嚼して飲み込むように。


「そんなに……簡単なものですかね」






「簡単よ。女なんて特に。感情で動く生き物ですからね。その点男の人は頭で物をよぅく考えてから動くから、理解しにくいと思いますが。まぁ人にもよりますけど」





高田さんはちょっと目を伏せると、小さく微笑みながら言った。


俺とそんなに歳が離れているわけじゃなさそうなのに、この人の考えてることは俺よりずっと大人びている。


それと同時に、この人もまたつらい恋愛を乗り越えてきたのだ、と何となく悟った。





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