EGOISTE
食後に頼んだアイスコーヒーが二人分運ばれてきた。
高田さんは何も言わずにアイスコーヒーの中にガムシロとミルクを入れてストローで丁寧にかき混ぜた。
俺は何も入れずにコーヒーのストローに口をつける。
思いのほか旨かった。
「お。旨い」
一言漏らすと高田さんはにっこり微笑んだ。
「でしょ?ここ、もとはコーヒー専門店だったんですって。豆も売ってるんですよ」
「へぇ」
どうりで。
「先生は何も入れないんですね。ここ、やられますよ」
高田さんは自分のお腹のあたりをちょっと指さした。
「え?ははっ……」
俺は苦笑いをした。
実は二回ほど胃潰瘍を患った経験がある。
医者の不養生って言うのかな。
最初は高校生のとき。二回目は歌南が消えて間もないとき。
コーヒーにはミルクを入れるよう、何度も祖母に注意されたっけ。
今でもばあちゃんに見られたら、くどくど言われるんだろうな。
あ、ちなみに俺のばあちゃんはまだ健在デス。
口うるさいばあちゃんは、俺を見るといっつも見合いを勧めてくる。
見合いってどうよ。
俺、まだ25よ。
まぁ病院の跡取りのことを心配してるのは分かるけど。
見合いより何より、俺はこの状況をとりあえず何とかしなきゃな。