EGOISTE

鬼頭はキッチンで手を洗ってうがいをすると、冷蔵庫を勝手に開けて中を覗きこんだ。


意外に律儀なやつ。


ってか、最近鬼頭が冷蔵庫の中を勝手に漁ってても、何も思わなくなった。


慣れってやつは怖えぇな。



俺はリモコンでエアコンのスイッチを入れた。


一日締めっぱなしにしていた部屋はうだるような暑さだ。


俺は暑いのが嫌いだ。


「あ、ちょっと空気の入れ替えしたいんだから、窓開けてよね」


キッチンの向こう側から鬼頭がしかめ面をして顔だけ出した。


「やだよ。暑いもん」


俺は鬼頭の言葉を無視してスイッチを入れ、首元のネクタイをちょっと緩める。


鬼頭がキッチンからこっちの方へ歩いてきた。


スリッパを履いてない、裸足のペタッペタと音がやけに大きく聞こえる。


「ガキみたい」


そっけなく言うと、鬼頭はリビングの窓を開け放った。


「ガキにガキって言われたくないね」


それでも、俺は鬼頭の言うことは一理あると思ったので大人しくエアコンのスイッチを切る。


首に纏わりつくネクタイがうっとうしい。


暑さを増徴しているようだ。


俺は乱暴にネクタイをむしりとった。



< 66 / 355 >

この作品をシェア

pagetop