EGOISTE
抜き取ったネクタイをソファに投げ置こうかと思ったけど、その手を鬼頭の手が阻んだ。
気づいたらすぐ近くに鬼頭がいる。
小柄な鬼頭の頭のてっぺんが見えた。
黒いつやつやした長い髪は、いい香りがする。
今時の高校生ってのは、みんなきれいにカラーリングしてるってのに、鬼頭は出会ったころと変わりなく黒い髪のままで居つづけてる。
俺はどっちかってと、派手な茶髪より清楚な黒髪の方が好きだ。
っても、鬼頭が好きとかじゃねーけど。
鬼頭は俺の手からするりとネクタイを抜き取ると、俺を見上げた。
俺と鬼頭の身長さは30センチくらいあるだろうか、首が痛そうだ。
千夏も、歌南もどっちかってと女にしちゃでかいほうだから、今まであんまり違和感なかったけど。
キスするときは大変だろうな。
―――って、俺は何を考えてるんだ!
こんな考え完全にログアウトしなければ。