EGOISTE
水族館に向かう道中、後部座席はひたすら賑やかだった。
学校の話、テレビの話、芸能人の話、ファッションの話。
女子高生はひたすら喋り続ける。
てか鬼頭がこんなに喋ってるところ見たの始めてかも。
こいつも普通の女子高生だったんだな。
「…悪いな。付き合わせちまって」
車線変更するためサイドミラーを見るついでに、俺は助手席で缶コーヒーを飲んでいる水月をちらりと伺った。
「たまには大人数を楽しいよね」
と水月はふわふわと笑った。
お前……どこまでもいい奴。
でも……
「こうなったいきさつ鬼頭から聞いた?」
「聞いてない。まこが水族館連れてってくれる、って雅が報告してきたから、またまこ弱み握られたのかなって思ったけど」
こいつ…甘い顔に似合わず鋭いな。
でもそっか。鬼頭は水月に話してないんだな。
そう言えばあいつ、人の秘密を不用意に喋り散らす奴じゃなかった。
まぁ水月に知られてまずい話じゃないから、いいっちゃいいけど。
俺は歌南と別れてから、女とは遊ぶだけ遊んで結構派手にやってた。
水月は咎めもしなかったし、何も言わなかった。
何も言わない寡黙さが、俺の救いになってた。
すごく楽だった。
そのときの水月に覚えた感覚に、鬼頭はひどく似ている。