EGOISTE
水族館のきれいな水槽で優雅に泳ぐイワシを前に、夕飯の献立を話し合ってると、水月と楠が二人で戻ってきた。
「お待たせ~」
楠は軽やかな足取りで俺たちの元へ走ってきた。
こいつは…いつっも何かしら楽しそうだな。
こいつも性格に問題があるものの、少なくとも何を考えてるか分からない鬼頭より扱いやすい。
「じゃ、行くか」
俺はイワシの水槽に背を向けると、
「は~い」と楠が元気良く返事をした。
「引率の先生みたい」鬼頭がぼそりと呟く。
あぁ、そうだよ。お前のお守りで俺は引率の教員になった気分だぜ。
―――
“日本の海”を抜けると、時間は12時半を差していた。
ちょうど腹が減ってきた具合だ。
「もうそろそろ昼飯にでもすっか?」
「あっちにレストランがある」
水月がパンフを開いて、順路の向こう側を指差した。
「行こ、行こ~」
楠がはしゃぎながら先陣を切る。
「楠、そっちじゃないよ」
水月が楠を呼び止め、苦笑を漏らしていた。
「こっち」
鬼頭が無表情に言って歩き出す。
なんか……俺たちってまとまりねぇな。