EGOISTE

レストラン“マーメイド”は壁が一面ガラス張りで、ガラスの向こうは水槽になっていた。


その水槽で色とりどりの魚たちが優雅に泳いでいる。


なかなか凝った趣向だ。


女受けは良さそうだな、なんて考えてると、


「ステキ♪」と楠がはしゃいだ。


楠って、典型的な分かりやすい女だ。


その反対に鬼頭は、無言で無表情。





あぁそっか。こいつにロマンを求める俺が間違っていた。


こいつは色気より食い気。


そういう女だ。



4人がけの席で俺と楠が隣り合わせ。


俺の向かい側が鬼頭で、その隣楠の向かいに水月が座る。



俺と鬼頭は魚介たっぷりのパエリア。


楠はシーフードグラタン。


水月はあさりとえびの和風パスタ。


それぞれに注文し、食事が運ばれてくるまで10分もかからなかった。


時間が時間だったが、客はまばらで店内は落ち着いている。






< 81 / 355 >

この作品をシェア

pagetop