EGOISTE
タバコの箱はテーブルを滑るとポンと音を立てて近くの柱にぶつかり、床に落ちた。
「何すんだよ!」
俺は思わず声を荒げた。
「雅?どうしたんだよ」
水月がびっくりして、鬼頭を見るが鬼頭はつーんと顔を逸らしている。
「雅、どうしたの?」
楠が怪訝そうに小首を傾げる。
ホントに……何だって言うんだよ。何が気に食わなかったんだよ。
「雅。ほら、まこに謝って」
水月が教師の顔になって鬼頭を軽く叱ったが、鬼頭は依然顔を背けたままだ。
「ったく……何だって言うんだよ」
俺はかがんでテーブルの下を覗いた。
確か、テーブルの下に入り込んでるはず。
って、あれ?どこ行った?
「まこ。こっち。ここにあった」
斜向かいで水月の柔らかい笑顔がこちらを見ていた。
水月の足元まで転がっていったんだな。
水月は自分の足元からタバコのケースを拾うと、すぐ近くにある俺の手に手渡してくれた。
にこっと、微笑んだ水月と目が合う。
“ごめんね”そう語っているようだった。