EGOISTE
食事を終えて、レストラン“マーメイド”を出ると、“オーストラリアの海”のコーナーに入った。
昼過ぎになって客が多くなったのか、さっきよりだいぶ混雑している。
「おーい、はぐれるなよ」
俺は近くを歩いていた楠に声をかけた。
ったく、俺は保護者かっての。
鬼頭と水月はもうちょっと先の方へ歩いている。
二人の後姿が見えて、俺はちょっとまばたきをした。
鬼頭が遠慮がちに水月のシャツの裾を掴んでる。
気づいていないのか、水月はマイペースに水槽の中の魚を見ているようだ。
まぁ人が多いし、はぐれるかもしれんからな。
なんて思ってると、水月の腕が後ろに回った。
お?
なんて思ってると、さりげなく手を後ろにやる。
ぉお??
鬼頭は水月のその手に自分の手を重ねた。
「何だ。あいつらいい感じジャン♪」
なんてーの?自然?お似合い??
そんな感じだ。
微笑ましいものを見るような目つきで俺は二人の姿を目で追った。
「楠」
俺はすぐ隣を歩いている楠に声をかけ、
「俺らは二人で回ろうぜ。あいつら二人きりにしてやろう」
と言って彼女の手を引いた。