EGOISTE
名残惜しそうに二人の後ろ姿を見ていた楠だが、大人しく俺の後にくっついてきた。
「意外。先生ってもっと気が利かない人だと思ってた」
んだと?こらぁ。
「気が使えない……とは違うなぁ。もっと…他人の恋愛には興味ない感じがする。ていうか他人に興味がなさそうって感じだったのに」
楠は天使のような笑顔でグサリと酷いことを言う。
やっぱこいつはシャチだな。
でも……まぁ楠の言ったことは外れていない。俺という人間の基本は楠の言った通りだ。
水月だから、色々心配したり気遣ったりするわけで、あいつじゃなけりゃほっとくだろう。
「そうゆうの男の友情っての?熱いね~」
楠はわざと茶化すように言うと軽く肩を竦めた。
「お前らほどじゃねぇよ」
楠と鬼頭二人の関係は、俺と水月のそれよりずっと奥があって根が深い。
一時は互いの存在を消し去りたいと願うほどまで強く憎んでいた間柄だったのに、半年もたつと今まで通りになってるからすごい。
まるで何もなかったかのように。
俺なら一生そんな奴とは付き合っていけんな。
それとも女だから、なのか。
そう言えば歌南も何も無かったかのように、俺の前に現れたっけ。
俺がどんだけ傷ついて、恨んで、憎んだかも知らずに。
平然と、何も無かったかのように。
女って残酷だ。