EGOISTE
「ガキに興味がないだけ」
俺は片方の眉をちょっと持ち上げた。
「彼女以外は、でしょ?」
楠の言葉に面食らって、俺はちょっと唇を結んだ。
「聞いたよ、雅から。ラブラブなんだって?」
あいつ~そんなこと楠に話してんのかっ。
「彼女以外には優しくない人。それってあたし嫌いだな」
「勘違いするな。俺は基本誰にも優しくない」
「そうだったね……」
楠はちょっと寂しそうに笑った。
ここに来て初めて見せる、ちょっと影のある含み笑い。
「嘘。さっきの言葉は本心じゃない。先生は優しいよ」
「優しいってのは水月みたいな人間を言うんだよ」
「あ~神代先生ね。確かに優しいよね」
どこか遠くに視線を向けて楠は口を開いた。
心が……どこか遠くへ向いてる。
ここじゃない、どこか遠くに。
何考えてるんだろ。
わっかんねぇ。
俺は乱暴に頭をかくと、
「まぁあれだな?俺と水族館来てもつまんねぇだろ。楠 明良(クスノキ アキラ)と一緒には来ねぇの?」
話題を変えるためことさら明るく言った。
楠は一瞬大きな目をさらに大きく開いて、固まった。