ありがとう…

日曜日、今日の朝5時、私はここを離れる


お父さんのところへ行くんだ


家族3人で


重岡に戻るんだ


昨日の夕方、私が家に帰ると、お母さんは嬉しそうに笑って、私を抱きしめてくれたんだ


久しぶりにお母さんが私を『夏樹』と呼んでくれたんだ


お母さんはずっとルンルン気分だ


空港に行くまでの道も、ずっとそわそわしてた


それほど嬉しいんだ


お母さんは、お父さんのことが大好きだった


今もまだお父さんのことを愛していたということが、すごく嬉しかった


空港で飛行機を待ってるとき、私の携帯には、さっき引っ越すとメールで伝えた蒔絵達からのお別れメールや電話がきていた


蒔絵は、電話でいつまでも友達だと言ってくれた


佳燐ちゃんとこはるちゃんは泣いてた


京ちゃんは写真を送ると言ってくれた


誉くんは、学校に行かなくても勉強しろと言われた


冠司くんは泣きまねをしながらラブソングを歌っていた


要からは、何の連絡もなかった


あともうちょっとで飛行機が来る


あともうちょっとでここから離れなきゃいけなくなる


あと、もう少しで…


【青森行き、3番ゲートへお進みください】


放送がながれた


青森行きの飛行機が来る


「行くよ」


お母さんは嬉しそうに立ち上がった


それについて行くように、私も立ち上がった


その時、ふと遠くに要が立っているのが見えた


「かなめ…?」


要は気づくといつも私の近くにいる


要は、どうしてこういうときにも私の近くにいるんだろう







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