5月の太陽
あくまでも日常
少し傾いた日によって、夕焼け色に染まる「我が家」。
日本的で大きな家。
瓦屋根が日に反射してキラキラ光ってる。
「ただいま。」
誰も居ないのに言ってしまう言葉。返事なんて来ないから虚しいだけなのに。
もう何年も暖かい「おかえりなさい。」なんてこの家から聞こえてきたことがない。
父親は指揮者。
母親はピアニスト。
どちらも名高い音楽家。
世界で活躍する自慢の両親。自慢の両親のはずだった。
音楽にのめり込む父親。
自由奔放な母親。
そしてなんの刺激も魅力もないこの家。
両親がこの家からどんどん離れていくのも仕方ない。