クロス・マインド
「何を突っ立っておる?
遠慮せんで座るがいい。」
表情を変えずに彼女は椅子に座り
お茶の準備を始めた。

こんな綺麗な女性の誘いを
断る訳にもいかないので…




いや、訂正して……
断ったら何されるか分からない
オーラを漂わせているので
素直に従って座った。

「あっ…あのう…」

オレの顔は完全に
引きつっているだろう。

「さっ、我が栽培した葉の
紅茶じゃ。
そんぞ其処らの物に
負けてはおらぬぞ?」

オレの前に見るからに高価な
カップが置かれる。

「ど、どうも。」

「遠慮はいらぬ。
この城のセキュリティを
半分は突破して来たのじゃ。
喉も乾いてるじゃろうに。」

「はっ、半分!?」

「うむ。お主の力量…
しかと確かめさせてもらったぞ。」





えぇ〜

あんなに頑張ったのに
半分なんですか!?





やっぱり、後半の警備の少なさは
わざとだったか。

肩の力が抜けていく。

「お主は合格じゃ。
あそこまで…
無傷で浸入したものはおらぬ。」

彼女は紅茶を飲みながら
優雅にくつろぎ始めた。

「でも…手抜きだろ?」

鉄壁と噂のラピスラズリ。
本当はこんな警備じゃないはずだ。

「無論。
今までも何度か手を抜いて
様子を伺った事があるが
お主の浸入力は
ずば抜けて優れておる。」
彼女はテーブルのお菓子にも
手を出し始めた。
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